まずはアスティアという機体そのものについて調べ始めた。アステア、と表記されることも多いが、本機に関しては登録原簿の記載がアスティアなのでアスティアと表記する。
グローブ式G102スタンダード・アスティアⅢ型滑空機。この機体について知るには、まずグローブ社の成り立ちから理解する必要がある。Grob社は1926年Ernst Grobがミュンヘンで創業した工作機メーカーだ。1933年にねじ切り機を製造し、戦後も自動車部品の製造などを手掛けていた。創業者の息子であるブルクハルト・グローブは、(おそらく)大学で変な虫に噛まれたか何かして、グライダーを趣味とするようになってしまった。そして会社を親から受け継ぎ、工作機械メーカーの社長になった。
彼はグライダーの(惨憺たる)製造過程を聞き、「生産技術」という銀の弾丸で伝統工芸品のようなグライダー製造を重工業化してやろうと企んだらしい。彼はGrob Aerospaceという会社を立ち上げ、シュンプヒルトからスタンダードシーラスの製造ライセンスを購入し、200機以上を製造した。
いよいよ自社設計に踏み切ることを決めた1970年代、マーケットには複座練習機はASK13が、スタンダード機としてはASW15やDG-100が、オープンクラスにはASW17やニンバスが居た。グローブは自社の強みを生かせるのは「そこそこの性能で安価」という路線だと判断し、1975年単座機のアスティアCS(クラブスタンダード)を発売し、更に2年後複座のツインアスティアを発売した。この際、単座機はG102、複座機はG103と名称が与えられた。その後スピードアスティアなど若干迷走しつつも改良を重ね、80年代に設計された最終型のアスティアのうち一つがスタンダードアスティアⅢだ。ここに至るまで「そこそこの性能で安価」というコアは引き継がれており、実際ASK23とスタンダードアスティアはほぼ同じ価格だったらしい。引き込み脚や水バラストが付いていることを考えると十分割安と言っていい。
僕は以前G103ツインⅢの3000時間点検に従事したことがあり、グローブ社の機体構造はある程度見ているのだが、確かに工作機械メーカーらしい重工業チックな金属部品があったし、生産効率を高めた代償なのか妙にたっぷりつけられてはみ出している接着剤などを目にした。
ここからは僕の”wild guess”なので、信頼性は全くないと思って聞いてほしい。グライダーの製造工程で、型にレイアップして作った部品を型ごと貼り合わせてモナカのように構造を作る工程が存在する。胴体は左右のモナカで、主翼は上下のモナカになっている。この張り合わせをする際、しっかりと接着されることを確認するために、ワイヤー状に伸ばした粘土を貼り合わせるのりしろに乗せて型を仮合わせてしてみて、粘土の潰れ具合から接着の健全性を保証する作業がある。プレス加工では型のクリアランスを測るために似たような事をするし、エンジンを組む際にクランクシャフトのベアリングの当たりを見るためにプラスチ・ゲージを使ったりするが、原理としては同じものだ。
僕はグローブは接着剤を多めに盛ってこの工程を省略ないし簡略化したんじゃないかと疑っている。それくらいたっぷり付いている。参考までに、SZD-51-1ジュニアは実測値227kg、スタンダードアスティアは実測値287kgである。引き込み脚の分があるとはいえ、同クラスの機体に対して25%重い。ちなみにwilipediaのカタログスペックでは前者は242kg、後者は250kgである。おいジュニアちょっと待て
胴体には他の機体には見られない木製のキールがある。多分これも接着時の生産性を考えてこういう構造にしてるんじゃないかと思っている。
閑話休題、ではフライト面ではどういう評価かというと、足が引っ込む素直な単座練習機というのが調べて分かる限りの大体の評価だった。競技に向いている機体ではないが、操縦は簡単で頑丈なのでクラブの機体としては向いているようだ。実際日本でも板倉のクラブ機として固定客のクラブⅢbが使われている。取り合えず避けた方が良い機体という訳では無さそうだなと感じた。
時系列的に後で知った評価をいくつか並べておくと、「低速でのサーマリングはジュニアに劣る」「ウィークリンクが白なので切れやすい」「スピンには入らない機体」「同世代のリベレやシーラスに比べフレアの特性が優しい、抜きすぎてテールから設置してもノーズが地面にたたきつけられることなくゆっくり接地できる」などの評価があった。人により割と好き嫌いが分かれている。因みに阪大では23の方がウィークなコンディションで学生でも浮いていられるということで飛ばさなくなったらしい。
まぁ、いくつか弱みがありつつも素性は悪くない機体みたいだ、と思った。
次に僕は現在のTC HolderであるLTB LindnerのサイトでTCDを漁った。JA Searchには2008年に妻沼で撮られた写真があったから、少なくともそれまでにMandetaryだったものは消化されている筈。時系列的にやってない可能性があるのはMSB-GROB-003とSB-G01、02、05。それぞれウォーターバラストコネクションの点検と電子機器の搭載についてと新型TOSTフックの使用認可、ラダーケーブルプーリーの交換だった。最後のだけお金が掛かりそうなのでメールを送って見たところ、一個当たり43,20EURとのこと。4つで3万円くらいか。まあ耐え。
ただ、1990年代末に出たスパースピゴットの交換が気になった。時系列的にはやってあるはずだが、もしやっていなかったとしたら間違いなく大きな修理になる。金もかかる。未実施なら入札はしない。それだけは決めた。
しかしこうしてみると、確かに15年位飛んで無さそうだけど復活させるのはそんなに難しくはないんじゃないかなと思った。