グライダーには格納庫かトレーラーが必要である。僕は部のトレーラーを借りて運び込んでからゆっくり準備するつもりだった。
某所にコブラトレーラーがあり、それを譲ってもらえるかもしれないという話が出たが、どうもちょっと価格面で揉めそうな雰囲気があったのと、アスティアが入らない可能性が出てきたため一旦ホールドになった。
ところが、東海アスティアを借りて部のトレーラーに入れて見たところ入らない事が分かった。
因みに、あとから板倉のY氏にそんな話をしたら、コブラトレーラーなんて単座と複座の2つの基本サイズしかないんだから多分ちゃんとしたドリーなら入るんじゃないのと言われた。確かにそうだったかも。
実は二整実地試験の一週間前、JA200Aを板倉で運行した時、加須からPW-6がアウトランディングしてきたのだが、その後席に乗っていたのがI氏だった。実地試験の週末、わざわざ板倉に寄ってくださり、雑談の折、この件に触れた時にI氏が「アスティアが入るトレーラーがある」とオーナーと繋いでくれたのだ。その場で買いたい意思を伝え、翌週見に行くことにした。
初めての小山絹はとても楽しい場所だった。トレーラーは、まぁ状態はそれなりだった。一カ所錆びて穴が空いていたし、外板の穴も両手で数え切れない位ある。しかし、トウバーとホーシングまで軽微な点食しかなく、電装もナンバー灯とバックランプ以外は機能した。もともとゼロから作るつもりだったのを考えれば、破格の状態と言う他ない。ざっとした試算で鉄鋼材だけでも10万はすることが分かっていたから、そういう点で評価すればそこまで悪くない。その場で購入を決めた。
因みに、トレーラーの中に日飛B4の胴体が入っていたのだが、その話はまた今度にしよう。
書類が届いたのが10/12の金曜日。次の月曜は祝日で、水曜は名古屋で就活、金土はRMの作業するって言っちゃったし、日曜は霧ヶ峰で中級滑空機を見に行く。
……ちょっと余裕がないぞ?
貧乏学生に新幹線などという贅沢は許されない。そこで、火曜に移転抹消をして木曜に夜行バスを降りて妻沼に直行し、そこから機材車に乗り換えて小山にトレーラーを取りに行く事にした。
10/14月曜日(祝日)、小山絹に行ってトレーラーの錆取りと陸送準備。タイヤは木曜日に交換するつもりでネット注文。クロスレンチがちゃんと入ることも確認した。
10/15火曜日、朝書類を確認していてナンバープレートを回収してないことに気づき、急ぎ再び小山絹へ。土浦陸運支局で実印を忘れたことに気づき、自宅と往復して移転抹消の書類を受け取る頃にはもう夕方だった。今日のバスで名古屋に発つんだぞ……
僕はこの頃正直大分参っていた。協力者と決めた耐空検査の目標は来年頭だったが、もう余裕がないどころかかなりビハインドですらあった。もうゲルコートを削っても塗り直せる気温ではない。就活と研究も進めないと拙い。授業も始まった。どれもちゃんと頑張っているつもりだったが、どれもあんまりスムーズには行ってなかった。
今回、アスティアを直すために乗る人を募ったりなんだりして、何時までに飛ばしたいねと目標を決めて作業を初めた。もう二度とこんなことはしない。誰にも、何も約束しないで好き勝手作業しよう。納期がある趣味はもはや仕事だ。いまとてもつらい。
抹消登録を済ませ書類を受け取り、家まで運転して荷物を纏めて東京に出る。夜行バスで名古屋に行き、水曜日に就活イベントを消化してとんぼ返りでまた4列シートに躰を押し込んで新宿に到着し、早朝まだ動いていない湘南新宿ラインを横目に電車を乗り継いて熊谷に行き、始発のバスで妻沼滑空場へ。妻沼行政センターで仮ナンバーを取り、熊谷警察署で車庫証明の申請を出してその足で小山絹滑空場へ。
小山絹では手早くジャッキアップしてホイールを外し、牽引バランスのためバラストを前部にぶち込む。荷締めベルトでB4の胴体をしっかり固定し、塚田タイヤ商会でタイヤを交換。ジーテックスという「ドバイ発のグローバルタイヤブランド」のタイヤで怪しいことこの上ないが、口コミを見る限りバーストしたりはしていないので、多分大丈夫。再び手早くホイールを装着し妻沼に出発する。日没時刻は5時だったのだが、4時半でも結構暗くなっていた。案外何とかなったな。すぐ仮ナンバーを外し、妻沼行政センターに返却。多忙だった。
10/22、休講だったので妻沼へ。灯火類を再確認する。テールライト・ナンバー・後退灯は点灯せず。ウィンカーは右にLEDの球切れがあった。たしか車検に通らない筈なので修理か交換が必要になる。新品で済ます方が安上がりなのでそうするが、先ずは問題の切り分けが必要だ。カプラーとターミナルで導通を見て見ると、ポジション(ナンバー灯連動)が導通しない。多分カプラー周りで断線している。カプラーを分解しようとしたが、ネジは完全に錆びていて外れそうもない。外す方法はいくつかあるだろうが、カプラーのゴムブッシュも千切れてビニールテープで何とかしているような状態だったので、全交換の方が良さそう。幸いブレーキランプとウィンカーの回路は生きているので、他の灯火の機能確認はこの回路を使った。
カプラーをアマゾンで発注する。金属製と書いてあったがプラスチックにメッキがされたものが届いた。こんな値段のものにゴタゴタ言っても仕方がない。返品して違うものを注文。
10/30 もう一度妻沼に。B4を井上工房に出し、カプラーを交換。灯火類をセットアップ。時間切れの気配がしたので陸運局に行きトレーラーの諸元を突き合わせ書類を見せたらどっちにも問題があることが判明。対処に動き出す。
11/1 書類を提出
11/2 寸法を計測して作戦を練る。最初は補助輪で対処しようと思っていた。取り付けマウントもあるしそこに補助輪を付けていたのだと思っていたが、24のトレーラーと比較するとどう見ても位置がおかしい。いろいろ計算し直して主軸を後退させることに決定。ジャッキアップしてホーシングとトウバーを外し、車軸は交代した位置で仮止めし、トウバーを切断。中子が取り出せないまま時間切れ。一応月曜日も祝日なので作業できるものの、材料が無いため中子を取り出すこととウィンカー付けることとフェンダーを付けることしかできないことから早めに撤収して作戦を練ることにして撤収。中子で同径パイプを継ごうと思ってたけど、寸法的には余裕があるので外から被せる形にする。ネットで注文。
11/7作業した。中子を取り出すつもりだったが、手間と効果を考えて断念。
11/8完成させて検査登録事務所へ。リフレクターが一個取れてたのを指摘されたので敷地内のなんちゃら振興センターでリフレクターを買って新規レーンへ。フェンダーからタイヤがはみ出ていると指摘された。知識としては知っているがまさかグライダーのトレーラがハミタイしてるとは思わず。くそう。でも今回はダメもと。一度検査してもらって駄目なところを指摘してもらえばそれでよかった。
11/11。夕方にエスティマを駒場から陸送して妻沼入り。
11/12割と清々しい朝だった。灯火類をチェックして、工房から引っ張り出して道路に出た数秒後。地響きみたいな音と一緒に後ろに引っ張られた。サイドミラーを見て見ると、トレーラーがバンクしている。左タイヤが無くなっていた。不思議~。
2m程後ろにタイヤが転がっている。ハブを見て見るとボルトが一本も刺さっていない。という事はボルトが切れた訳ではない。
ジャッキアップしようとしたがダルマジャッキだと入らない。パンタグラフジャッキを最低にして漸く入った。しかしうまく上げられない。パンタグラフジャッキはゼロから延ばすのが一番トルクが居るのだ。そのせいで滑って外れてしまう。僕は手で動かないよう抑えつつ膝と手でなんとかハンドルを回して引っかからせ、少しずつ上げていった。ジャッキアップは落ちた時怖いが今回に限っては心配いらない。何せもう落ちてしまっているから。
脱落したボルトを回収したがどうも変形してしまっている。仕方がないから片輪から拝借してタイヤを不完全につけ、ゆっくり運転して宿舎の駐車場になんとか入れた。トルクレンチを持ってきて反対側を締めたらちょっと回った。緩かったのか、緩んだのか。それは分からない。ただトルクが十分に掛かってない状態になったのは間違いない。スペーサーのせいかもしれない。ボルトの掛かりは明らかに浅い。スペーサー入れたのにボルトそのまま使ってる?
よくこんな状態で小山絹からの回送で大丈夫だったなと思う。或いは締め付けトルクが足りなかったのか。他のトレーラーからホイールボルトを拝借して付けなおす。
車庫証明等の手続きで世話になったH氏が話しかけてきた。ホイールとタイヤについて、トラック用じゃないと通してくれない筈だけどねぇと嫌なことを言ってきた。タイヤに関しては最近はロードインデックスに統一されつつあるからトラック用タイヤがどうのという話は関係なくなってきているとは思うが、ホイールに関しては分からない。
壊れたフェンダーを掛合で叩いて修正した。コメリで取り急ぎ足りないボルトナットを買って装着した。なんとか出発する準備が整った。必要な物は揃ってる、筈。色々あったけど今日はなんとか車検を通せるかな。通せたら今日くらい熊谷駅で良い物を食べよう。一人飲みも良いかもしれない。僕は出発前の点検を済ませ、出発した。
葛和田の交差点を曲がる瞬間、若干の衝撃と共に、低い衝撃音。まさかまたホイールが外れた?バックミラーを確認する。横倒しになったトレーラーが写っていた。幸い、どこにも当たっていない。縁石に乗り上げて転がったらしい。近くの陸送業から3人程様子を見て来てくれたので、押して正立に転がして戻した。その敷地に一時停めさせてもらって状態を確認。一旦河川敷まで戻って警察を呼んで事故処理。ローソンで菓子折りを買って手伝ってくれた人に渡してお礼を言い、帰った。
どうにもボルトの座面形状や長さがあっていない気がしたので色々調べたところ、どうもテーパー座金のホイールに球面座金の、若干短いボルトが刺さっているらしい。正しい奴を購入。
11/14リトライするために木曜午後入り。仮ナンバーとタイヤのボルト交換、屋根の修理をする。
球面のボルトを無理やり使った所為で若干の変形はあったが、しっかりテーパー座金だった。前の車がホンダのステップワゴンだったおかげでこういった知識がついたところがあるのでホンダに感謝するべきかもしれない。ありがとうホンダ、4輪の方はあんまり魅力を感じたことないけど。
15日金曜日
予定は延期に延期を重ね、マージンを使い尽くし、もう終わりが見えていた。ここで通らなければもう打開策はない。完全に予定を組みなおすしかない。論理的にはもう十分準備が整っているから大丈夫だろう、という気持ちと、どうせうまく行かないんだろうなという気持ち。
1レーンはパス。新規レーンに並び直す。列はかなり長く、進みも遅かった。待っている間にスマホで時間を潰したが、暇つぶしにもどうも身が入らない。
やっと自分の番が回ってきた。今回は空けろと言われたので前と後ろを開けた。先に進んで重量計測をしたあたりでちょっと後ろに来てください、と言われた。ウィンカーのサイズが足りない、と言われた。じゃあ前来たときに指摘しろよ、何のために余裕をもって受けに来たと思ってるんだ、とも思ったものの。
「……そうですか」いろいろと飲み込んでそれだけ言った。
仮にこの人たちに先週はスルーされたんですけどと言ってもどうせ知らんぷりだろうし、失敗を認めさせたところで飲み会の愚痴にされるのが精々だろう。失敗を認めて反省して次に生かす……なんてことには絶対ならない。人間は概してそんなに有能ではない。
仕方が無いので同行者のN氏を待合室から呼び出して帰路に就く。
航空従事者の学科試験も、院の授業も間に合わない覚悟は決めていたが案外間に合いそうだ。無事トレーラーを妻沼に回送してN氏の車でナンバーを返しに行き、すき家に行って昼飯を食べて熊谷駅まで送ってもらった。有難い。
それから適当に学科試験と授業をシバいて家に帰った。学科試験は受かった。
陸送が出来なくなって明日はどうやら暇になってしまった。消化しなきゃいけない課題が三つ。実家の車のパワースライドドアが故障したので直さなきゃいけない、部品は買ってある。そういったことをしよう。一旦このタスクから離れよう。1日でもいいから。そう思って家に帰る。
しかし結局、週末は熱を出して寝込んでいた。ちょっと無理が祟ったらしい。無理せず授業の課題だけシバいた。
11/19火曜日、朝4時に起きて始発で妻沼へ。ウィンカーを増設。来てもらう予定だった人が急に来れなくなり、急遽N2氏に来てもらい、車検へ。何と今回はすんなりと通った。書類手続きで、自賠責が一ヶ月足りませんと言われて5000円も払って一月入ったら、又呼び出されて「すみません、必要ありませんでした、取り消して貰ってください」と言われた。なんやねん。取り消しできた。最後までトラブルたっぷりである。
ナンバーを付けて封印してもらい帰る。そのまま仮ナンバーを返して駒場まで陸送した。家に着いたのは10時。
翌日早朝、RMの作業の為にまた家を出た。でも陸送の準備はできた。
ここで中古グライダーに関する金言を一つ。
“Buy a good trailer and fly with whatever inside it.”
中身は何でもいいから良いトレーラーを買え。